胃食道逆流症

胃食道逆流症(gastroesophageal reflux、以下GER)~特に重症心身障害を併せ持つお子さんを対象に~

胃食道逆流症(gastroesophageal reflux、以下GER)とは?


一旦胃に入った内容物(摂取内容・唾液など)が再び食道内へ逆流し、しばしば嘔吐する病態。


それによりどんな合併症がおこるの?


次のような様々な事が起こりえます。

  1. 逆流性食道炎 胃酸を含んだ内容物が食道へ逆流するため食道壁があれて、出血を誘発する。高度だと貧血を引き起こす。
  2. 誤嚥性性肺炎・気管支喘息 逆流したものを嘔吐しきれず、気管内へ呑み込み、肺炎を引き起こす。また気管への刺激になり、喘息を誘発する。
  3. 栄養・発育障害 胃内に入った栄養物が腸へ流れていかず、嘔吐してしまうため実にならない。よって低栄養状態となり、体重減少・体力低下へつながる。
  4. 筋緊張亢進 逆流が頻回であると、本人は常に気持ち悪い状態が続いている。よって落ち着かない状態となり緊張が亢進、コントロールのための薬物も種類・量共に増加する。

逆流症と呼吸・栄養・緊張・姿勢などは上記のごとく密接に関連しているため、それぞれの悪化がさらに状況を厳しくするという悪循環をうみだします。


症状はどんなものがある?


こちらも多岐にわたります。

頻回の嘔吐、吐いたものの中に血液・コーヒー色のものが混じる、黒色(タール)の便、咳、呼吸苦、痰が多い、のど・胸がヒューヒューいう、やせ、難治なじょくそう、筋緊張が強い、痙攣が頻発 など。


実際どうやって逆流症と診断するの?


まずお家での症状・状況をくわしく聞きます。そこから逆流症が疑わしいときには次のような検査をします。

  1. 食道胃造影検査  食道へ造影剤(バリウムなど)を流し、食道・胃の形、造影剤の流れ具合、逆流症の程度などを観察します。以下に挙げる検査と比較して最も簡便で、得られる情報も多い検査です。
  2. 食道24時間pHモニタリング  これは胃酸の食道への逆流をモニターする検査です。実際には非常に細いチューブを鼻から挿入し、食道へ留置します。そして食事・栄誉注入、体位変換などいつも通りの日常生活サイクルを送ってもらいます。そのなかで、どの程度の逆流があるかを24時間、丸一日観察します。多くの場合は一泊検査入院にて行います。
  3. 上部消化管内視鏡検査  いわゆる胃カメラです。食道炎の程度などを観察しますが、全身麻酔にて行うことが多く、必須検査ではありません。
  4. 食道シンチグラフィー  放射性物質(体に害はない)を含んだ食事・ミルク等を胃内へ投与し、逆流を画像としてとらえます。1~2時間の検査で、食道造影と24時間モニタリングの中間的な役割です。しかし必ず行う検査ではありません。

これら(特に1、2)を総合し、胃食道逆流症を診断します。


治療法は?


1.内科療法

2.外科療法(①気管への手術(気管切開・喉頭気管分離術など)②逆流防止術)

ここでは、われわれ外科が行っている②について説明します。(①は当院では耳鼻咽喉科が行っています)

内科治療が効果を示さなかったり、内科治療が長く続いているような方には、手術を検討しています。

 

逆流防止手術には様々な術式がありますが、当院では、Nissen手術を採用しています。 これは、胃を食道に巻きつけ固定し、胃の内容物の逆流を抑える手術です。場合により胃瘻造設術をあわせて行います。

 

手術創も以前はそれなりに大きいものでしたが、最近では腹腔鏡下手術が盛んに行われるようになり、ごく小さい創での手術が可能となってきました。当院でも近年腹腔鏡下手術を活発に行っており、年々手術件数もアップしています。(表・グラフ参照)


手術をするとどうなるの?


嘔吐がおさえられ、栄養がコンスタントに入るため、全体的に調子がアップします。具体的には呼吸の安定、筋緊張の低下、貧血の改善、体重増加などです。


手術はいいことばかり?


そうでないケースもまれにあります。手術をされる患者さんの多くは、呼吸に問題を抱えていたり、栄養不足による体力低下を認めます。よって、手術・麻酔そのものが本人の負担となる可能性もあります。また、術後になかなか栄養注入がはかどらなかったり、胃の張りが強くなる例もみられます。

 

ですからまずはご相談いただき、お子さんの状態をみながら手術の必要性・タイミングなどを一緒に考えていきましょう。


年代 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

開腹件数 

      3       4       0       4       0       1       0       6       4       3       6
腹腔鏡件数       0       0       0       1       2       5       1       5       7     13     13

総件数

      3       4       0       5       2       6       1     11     11     16     19

文責:工藤博典(元研修医、現東北大学小児外科)

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